三十男のピロートーク

パチスロ必勝ガイドのブログ「スロガイフラグ」で2005年から連載された木村魚拓のコラム。(当時)三十男がつぶやくピロートークには、甘さの中に苦味を隠した大人の男の在り様が綴られているが、ベッドで語り合うものとはまるで違う。

※毎週月曜アップ予定!!

その11

2020/04/20

 

 「萌え系」「出会い系」、そして横浜を発祥とする「家系」なるラーメンとはほとんど無縁の生活を送ってきた私は、先日、その旨さに気付くに至り、今や毎晩でも豚骨醤油ベースの濃厚スープをすすっていたい、何なら濃厚スープに飛び込みたいと考えるものであるが、残念ながらその流れを汲むラーメンを提供する店は近所にない。


 ないとは知りつつ諦め切れず、家系、家系、家系、うわ言のように繰り返しながらネットで検索していると、まるで聞き分けのない子供の要求に、仕方なく応えるお母さんのような口調で、「じゃあ、作ろうか」と嫁は言った。


 いつだったか、ジャイアント馬場を彷彿とさせる風貌のやけにデカい若者が、2→1→3→4の押し順でバイオハザードをノリノリでブン回していた。


 ご承知のように、4→1→2→6はハトヤであり、9→6→9→6はアデランスであり、2→1→3→4はバイオハザードにおいて禁忌である。見るに見かねて隣の馬場に、その旨優しく伝えたところ、私の目を2秒ほど見つめた後、礼を言うでもなく、さりとて怒り出すでもなく、もちろんガウンを脱ぎ捨てるでもなく、そもそもガウンなんぞ着ておらず、無言のまま台に向き直り、再び2→1→3→4の順で消化し始めた。その時、ちょっとした親切心はただのお節介へと変わって星となった。私の心の中で、鈍い光を放つ星となった。


 嫁が上がっていった2階から、さっき聞こえてきたのは「バシュッ」という音だった。あれは紛れもない、サッポロ一番の袋を開く音である。家系ラーメンを、家で作るラーメンと勘違いしている可能性が非常に高いものの、それは違うと指摘しようとなかろうと、出てくるのが同じサッポロ一番であるのなら、ここは黙っておくべきではないか。


 今、2階の台所からは、湯がグラグラ沸いている音が聞こえます。
 

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