三十男のピロートーク

パチスロ必勝ガイドのブログ「スロガイフラグ」で2005年から連載された木村魚拓のコラム。(当時)三十男がつぶやくピロートークには、甘さの中に苦味を隠した大人の男の在り様が綴られているが、ベッドで語り合うものとはまるで違う。

※毎週月曜アップ予定!!

その13

2020/05/04

 

 電車に揺られていると、目の前の席が空いた。


 その場に自分しかいなければ咎められる理由はない。そこがたとえ優先席だとしたって堂々と座るにしても、他に人がいる時には「オレは果たしてこの席に座る資格があるのだろうか」と、周囲を確認するぐらいのことは彼らだってしているはずなのに、何故に新鬼武者に対してはそこまでがっつくのか。


 先日、隣で新鬼武者を打っていた女性が、急用ができたのか、あるいは仕様を知らぬのか、1000Gを超えるハマリの最中に帰り支度を始めた。天井までもうひと頑張りであることを告げた場合、仕様を知っているなら余計なお世話だし、知らなくとも今度は蹴られた際に余計な恨みを買うことになる。よってその様子を黙って眺めていると、女性が棚の上の荷物を手にした瞬間に、2人の男子がほぼ同時に私物を下皿に投げ入れた。


 その後の展開はご想像通り、「オレが先だ」、「いやオレだ」の押し問答。欲望丸出しの舌戦を見せつけられ、私は心の中で叫ばずにはいられなかった。
 ちょっと待て、冷静になれよ2人とも。新鬼武者の天井が旨いのはわかる。1000Gを超えた台がお宝であることは重々承知しているが、自らハメたのならともかく、その台は言わば拾い物。電車に例えるなら指定席ではなく、目の前で偶然空いた自由席に過ぎない。


 だとしたら、とりあえず周囲を見渡すべきではないのか。台を確保する前に、まずはその席に座る資格のある者を探すべきではないのか。よく見ればいるはずだ。地主に法外な年貢を要求されているお爺さんとか、野宿が続いており天井を夢見るお兄さんとか、隣の席で5万ぶち込んだ私とか。
 

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