2020/06/08
パチスロといえばリール、コーヒーといえばクリープ、相撲といえば押し出し、焼き肉といえばカルビなのに、そのカルビがないとはどういうことか。
「申し訳ありません。本日カルビが終わってしまいました」
コーラが運ばれてきた後だった。さあメインたる肉を頼もうと、「カルビ」の「カル…」まで言ったところで、控えめどころかむしろ食い気味に、オーダーを取りにきた豆もやしみたいな店員が件のセリフを吐きやがったのである。
10万勝っての豪勢なバンザイ焼き肉ではない。6万も負け、もはや余計なお金はびた一文使いたくなかったが、このままじゃ心の整理がつかないからと、半ばヤケになって突撃した残念焼き肉である。安く済ませたかったものの、こうなったら仕方ない。ならば上カルビといこうじゃないか。
「申し訳ありません。上カルビも終わってしまいました。特上カルビも含め、本日カルビはご用意できません」
…バカじゃなかろうか。焼き肉屋なのにカルビを切らすとかバカじゃなかろうか。しかも、口では謝っているものの、申し訳なさそうな表情をひとっつもしていないから余計腹が立つ。じゃあ何ならあるんだ。オススメは何なんだ。
「アバラでございます」
知らないよ。物心ついてからこっち、ほとんどカルビとタン塩だけで焼き肉を謳歌してきたんだ。アバラって何だ、アバラって。
「オススメでございます」
…もういいや。キムチと、そのアバラを2人前と、あとはカルビクッパをお願いしますと伝えてメニューを閉じたわけだが、このオーダーにはトラップが仕掛けてある。そう、カルビクッパである。
カルビがないことを知りながらカルビクッパを頼んだ理由、それは豆もやしの「申し訳ありません」がうっとりするほど美しい響きだったからである。滑舌の悪い私には到底不可能な「申し訳ありません」。もう一度だけ聞きたかった。流れるような「申し訳ありません」をアイツに言わせたかったのだ。
オーダーを伝票に書き込んだ後、「かしこまりました」と言って厨房へ消えた豆もやし。しかし、10秒と経たずに神妙な顔つきで戻ってきた。ほうら、おいでなすった!
「カルビがないものでカルビクッパは…。それと本日アバラも終わっておりました。申し訳ありません」
…ああ、やっぱりアンタの「申し訳ありません」はとろけるよ。とろけちまいそうだよ。これを客に聞かせたいがために、この焼き肉屋はカルビもオススメも切らしているといった推測は、おそらく間違いだと思う。
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